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出張版「それいけ!!松戸アングラー隊」  〜徳光先生「MS動画図鑑」収録現場へ潜入!

 モビルスーツの魅力を余すことなく盛り込んだ「ガンダムMS動画図鑑」。今回は漫画家の徳光康之先生がインタビュアーとして、ナレーションを務める檜山修之さんと、音響監督の藤野貞義さんに直撃取材を敢行! 徳光先生は「月刊ガンダムエース」(角川書店刊)で「それいけ!!松戸アングラー隊」を連載中。この漫画は、ジオン信奉者&ドム好きな徳光先生が、フリーダムにガンダム関連のグッズやイベントをレポートしていくのが魅力。“破天荒?”ジオン・ファンによるこのインタビューは、はたしてどんな結末を迎えるか?

 

徳光 足かけ8年にわたって制作された「MS動画図鑑」ですが、今回パッケージ化されたことをどのように感じでらっしゃいますか?

檜山 単純に驚いてますよね。最初は携帯電話のコンテンツなどで始まったので、言ってしまえば地味〜な存在だったんです(笑)。ガンダム30周年という“お祭り”に「MS動画図鑑」も参加させてもらえた感じなのでしょうかね。でも商品化されるのはうれしいですよ! やはり携帯電話コンテンツでよりも、パッケージとしてリリースされるほうが多くの方に視聴してもらえる機会が増えると思いますから。

徳光 僕も配信版ではなく、今回の商品化で初めて拝見したんです。

藤野 世間への露出度が違いますからね。それに携帯電話の小さい画面でよりも、テレビの画面で見てもらったほうが印象も変わってきますよ。

徳光 大きい画面で見たほうが細かいところにも目が行きますしね。

藤野 つくっているときは自覚しなかったのだけど、改めてDVDで見ると「こんなにあったのか!」と、びっくりするくらいの数なんです。だから膨大な数の映像を全部見てほしいという気持ちはありますよね。

徳光 上映会でもあればね(笑)。

(一同笑)

藤野 7巻全部で9時間30分くらいあるので、さすがにしんどいでしょう。オールナイトになっちゃいます。それにずっと檜山さんの声だけが劇場に流れるんですよ(笑)。

檜山 だんだんお客さんが飽きてきますかね(笑)。

徳光 ナレーションでは檜山さんは、いつもよりは少し声を抑えた感じに聞こえてました。これはナレーションというのを意識されたのでしょうか? 拝見する前は、もっとガッと熱い感じでいかれるのを想像してたんです。

檜山 いや、もう量が多いんで。(一同笑)一回のナレーション録りが10コンテンツくらいだったら、高いテンションでも保てるんですけど、今日の収録のように46コンテンツを一気にだと死んじゃいます(笑

藤野 でも檜山さんの場合、声を抑えてても熱くなっちゃうんです。

檜山 どちらかというと、藤野さんには手綱を締めてもらっていました。録音ブースの向こうから「熱くなってるよー」と。

徳光 なるほど。

檜山 声を出せというディレクションよりも、抑えられるディレクションのほうが圧倒的に多い現場でしたね。

徳光 そのヴァージョンもぜひ聞いてみたいです!

檜山 多分、耳が痛くなりますよ(笑)。

徳光 思わず力が入っちゃったところもあるんですか?

檜山 そういうところは作品としてトータルで見ると、おかしくなっちゃうじゃないですか。そこは藤野さんに止めていただいてます。

藤野 1コンテンツは約80秒ですし、連続して見るわけではないので、短い時間で淡々とナレーションをしても、仕方ないかなとも思うんです。やはり見ている方には熱くなってほしいので、語り部分として檜山さんには“歌うように”やってもらっているところはあるんですよ。

徳光 “歌うように”とはどういう感じなんですか?

檜山 セリフを盛り上げるような言い方ですかね。それを我々の中ではよく“歌う”と表現するんです。

徳光 ちなみに檜山さんのお好きなモビルスーツは? 好きなモビルスーツでテンションが変わったりすることも?

檜山 僕の好きなモビルスーツは、Ez8です! 自分のガンダムですから。

(一同笑)

徳光 実は意外性を期待してたんですけど(笑)。

檜山 いやいや持論ですが役者というのは、単純な人種なんです(笑)。自分のキャラクターがいちばん好きなんですよ。

徳光 それくらいキャラクターに入り込むわけですね。でもEz8のナレーションではそれほど熱く“歌って"なかったですよね。

檜山 逆に「第08MS小隊」で熱くやり過ぎてしまうと、完全に“えこひいき"状態になって、お客さんにバレてしまうじゃないですか。むしろそこは淡々と語っていきました。

徳光 そこはプロ意識をもってやらないといけないですよね。

檜山 「MS動画図鑑」ではひとりのナレーターとして呼ばれてますから。ただ、自分が関わっていた作品だと、すでに単語などの前知識があるので幾分楽ではあります。初めてかかわる作品だとキャラクターやモビルスーツの名前から頭に入れていかないとならないので。

徳光 初めて見る字面のモビルスーツもあるでしょうしね。

檜山 それこそイントネーションもよくわからない状態から始めています。ほとんど手探りになりますね。そういう意味で関わっていた作品というのは、第一段階はクリアできているんです。

藤野 檜山さんの年齢からするとリアルタイムで見ていた「ガンダム」もあれば、仕事で関わった「ガンダム」もあります。だけど、これだけの数をこなすのはさすがに大変だったと思うんです。特にガンダム作品に出てくる「ことば」って特殊なものが多いですかね。

徳光 読みにくいんですか?

藤野 読みにくいなんてものじゃないですよ(笑)。

檜山 あまりにも読みにくいのが多くて、僕は富野由悠季監督に半分愚痴で文句を言ったことがありますから(笑)。

藤野 それを継承しているのか、ほかの「ガンダム」もこぞって読みにくい名前が多くてね。

檜山 最初はいいんですよ。「MS-06FザクII」とか、短いですから。でもだんだん型式番号に「0」が4つも付いたり、「V」や「C」が付いたり、名前も舌を噛みそうなくらい長くなって(笑)。作品もパワーアップすると、名前もどんどんパワーアップしていくんです。

藤野 「ファースト・ガンダム」から「ガンダム00」まで、これだけの数のモビルスーツが出てくると、日本語、英語はもちろん、フランス語、ドイツ語、中国語のニュアンスまでもが入ってくるんです。発音も作品によって違ってくる。そういう意味で尋常じゃなかったですね。

 

徳光 僕個人のことで恐縮なんですが、ナレーションが檜山さんだと、僕はどうしても「第08MS小隊」を意識して聞いてしまうんです。ナレーションでは声を抑えてらっしゃるので、最初はシロー・アマダの声ではないと思っていたんです。でも聞いていくうちに、だんだん……。

檜山 シローに聞こえてきたんですね(笑)。

徳光 ええ(笑)。それで、僕はジオン派なのでジオン系モビルスーツを集中的に見るんですけど。

檜山 ジオンがお好きなんですか?

徳光 はい、大好きなんですよ(笑)。それで見ていくうちに、シロー・アマダがドムを褒めているみたいに聞こえてきたんです。

(一同笑)

徳光 僕は「機動戦士ガンダム カードビルダー」というガンダムのアミューズメントマシンでよく遊んでいるんですけど、「第08MS小隊」のガンダムで部隊を編成してくるプレイヤーが多いんですよ、使い勝手がいいらしくて。それで僕がジオンの部隊でプレイしていると、シローに「倍返しだぁーっ!!」とやられることが多くて、ちょっとシローの声はトラウマになってたんです。その声のトラウマがあるのに、次々とシロー(檜山さん)の声でジオンのモビルスーツが褒められていくわけですよ(笑)。それを聞いていると、複雑なんですけど、ちょっとうれしいんです。敵に褒められている気がして(笑)。

檜山 なるほど! そういう楽しみ方もあるんですね(笑)。つくっている側だと見いだせない楽しみ方ですね。

 

徳光 それでは最後にお二人からファンの方々へひと言お願いします。

檜山 言ってしまえば「MS動画図鑑」は本編でもなんでもなくて、出てきたメカを一堂に集めただけのことなんですよね。でもそれが、ひとつのパッケージにまとまって世の中に出る。改めて「ガンダム」という作品のパワーを感じますよね。あと、文字どおり“見る図鑑”なので、全部ご覧いただいてモビルスーツ博士をめざして勉強してください!

藤野 新しい「ガンダム」は、これからも続くでしょうが、とりあえずガンダム30周年のひとつの集大成としてはちょうどいいのかなと思うんです。自分も半分以上かかわっているシリーズだから、「なんでこんなに続くんだろう?」とふと考えることがあります。そういう意味ではひとつの区切りかもしれませんね。でもこれがまたキャラクターの図鑑になってきたら、もっと大変だろうなぁと想像しちゃいますね(笑)。

 今回のインタビューのもようは、「月刊ガンダムエース」2月号(12月26日発売)掲載の「それいけ!!松戸アングラー隊」でもレポート予定。描くのはもちろん徳光先生!

写真左から徳光康之先生、檜山修之さん、藤野貞義さん。収録スタジオにて。収録を見学させていただこうと、徳光先生は取材開始時間より少し早めにスタジオ入り。しかしナレーション録りは順調に進んでいて、ブースに入るころにはすでに終わっていたらしい。残念だけど、さすが檜山さん!


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